中学生のとき、窓際のいちばん後ろの席になることが多かった。
それに、コッペパンみたいなあだ名の、よく寝ているサッカー部の男の子と近い席になることが多かった。
お互いに関してまるで興味がなかったので、いつも近くの席で居心地がよかった。
ああ、班で給食たべてる時に春雨のサラダに対して
「ハルハルサメサメしてんなあ、」とわたしが感想を述べた時、コッペパンさんがツボに入ったらしく、笑っていたのは嬉しかった気がする。
どんな季節だっただろうか。
コッペパンさんと隣の席だったときだ。
わたしが窓際で、コッペパンさんがその隣。いつもコッペパンさんは伏して寝ていた。
季節は忘れてしまったけれど、授業中にわたし目掛けて一直線に飛んできたカマキリがいた。
カマキリが飛んできた。
えっ、私に向かってきてる?
確実にカマキリと目が合っていた。
目と目が合う瞬間だ。
コッペパンさんが、寝ているかと思っていたのに。
勢いよく手をわたしの方に伸ばしてきた。
何をしたかというと、
とてつもない速さで、カマキリの進行方向を変えるように、カマキリを後方に吹っ飛ばした。
音にすると「パァン!」だろうか。
すべてが一瞬のできごとだった。
カマキリが自分に向かって飛んできたこと。
カマキリと目が合ったこと。
コッペパンさんが起きていたこと。
コッペパンさんがカマキリを吹っ飛ばしたこと。
後ろに吹っ飛ばされたカマキリ…
全てが信じられないほど驚いた。
アンビリーバボー。
一瞬すぎて、わたしが夢を見ていた可能性も否定できない。
でも、吹っ飛ばされたカマキリが気になって、授業中チラチラ後ろを振り返っていたらカマキリが外に歩いて出ていくところを見て安心した記憶がある。
パァン!と吹っ飛ばしておきながら殺さない、コッペパンさんの、飛んできたカマキリの進路を変えるスキルに感服した。
ちなみにここで、授業中・授業後にコッペパンさんとカマキリの話をした記憶はない。
わたしの興味は、コッペパンさん<カマキリだったみたいだ。
だからこの話を知っているのは、わたしとコッペパンさんだけだ。
こうして記憶に残っているだけに、何人かには話した記憶があるけど。
でも、実際に目にしたのはわたしとコッペパンさんだけであって、もしもコッペパンさんがあのカマキリのことを忘れてしまっているとしたら、 覚えているのは、わたしだけだ。
意図せず中学生の顔面めがけて飛び立ってしまい、突然現れた手によって進路を変えられてぶっ飛ばされたカマキリ。
着地したあと、なんらかの考えをもって開いている窓に向かってテクテク歩いていたカマキリ。
その後、外に出ていったカマキリの姿を見たものはいない。
そんな、いつかのカマキリのことを思い出すように、過去を振り返る、そしてこうして皆に伝えていこう。
そう思ってこのブログを書き始めることにしました。
以後、よろしくお願いいたします。
2020.5.25.
@nininishiki